耐寒材料チームの遠藤裕丈研究員は,平成22年2月23日(火)〜25日(木)に北海道開発局研修センター(札幌市東区)で開催された
平成21年度 第53回
北海道開発技術研究発表会のカテゴリー「コスト」で論文発表を行い,寒地土木研究所長賞を受賞しました.
発表した論文は「表面含浸材と含浸性防錆材の併用による既設コンクリート構造物の鉄筋腐食の進行抑制に関する基礎的検討」(共著者:田口史雄(耐寒材料チーム)・山脇剛(稚内開発建設部浜頓別道路事務所))です.
厳しい財政事情と急速な少子高齢化に伴い,社会基盤の整備・維持管理に投じられる予算は年々減少の一途を辿ることが予想されています.一方で,これまで整備された社会基盤のストックは現在も我が国の産業と人々の生活を支える重要な役割を担っており,予防保全的な維持管理を効率的に行い,ライフサイクルコストの最小化を図りながら,既存のストックを長く使いこなす対応が求められています.
本論文は,表面含浸材(シラン)と含浸性防錆材(アミン)による鉄筋腐食抑制効果の明確化を目的に,微細ひび割れが発生し,塩化物イオンを含んでいる状態のコンクリートを用いて行った乾湿繰返し実験の結果,および既設道路橋の主桁(供用約50年,塩化物イオン量は最大1.8kg/m3)で行った試験施工・追跡調査の中間結果をまとめたものです.室内実験では,鉄筋位置の塩化物イオン量が4kg/m3以下の範囲において,腐食速度の低減効果が認められました.また,試験施工から約1.5年後の追跡調査では,緩やかではあるが腐食速度は低減していることが確認されました.
選考の結果,本論文は社会的な貢献度が高い研究であり,一定の塩化物イオン量以下であれば腐食速度の低減効果が期待できることを明確に示した成果は,将来スタンダードに成り得ること,また,研究手法の展開が的確で基礎的研究とされているが有用性に富む研究成果を得ていると高く評価され,寒地土木研究所長賞に値すると認められました.
授与式は,平成22年5月11日(火)に札幌第1合同庁舎10階2・3号会議室で行われました.なお,標記の発表会では,162編の論文(自由課題)が発表され,このうち5編が北海道開発局長賞,本論文を含む4編が寒地土木研究所長賞,7編が北海道開発協会長賞,18編が奨励賞を受賞しています. |