遠藤裕丈研究員


 

耐寒材料チームの遠藤裕丈研究員は,平成221028日(木)〜29日(金)に国土交通省(東京都千代田区 合同庁舎2号館)で開催された「平成22年度国土交通省国土技術研究会」の「イノベーション部門」において論文発表を行い,優秀賞を受賞しました。

発表した論文は「表面含浸工法による既設コンクリート構造物の鉄筋腐食抑制効果の基礎的評価」(共著者:田口史雄(耐寒材料チーム)・山脇剛(浜頓別道路事務所))です。

寒冷地のコンクリート構造物で懸念される劣化の一つに,凍結融解と塩化物の複合作用による鉄筋の早期腐食が挙げられます。社会基盤の整備・維持管理に投じられる予算が年々減少の一途を辿ることが予想される中で近年,劣化の進行抑制が期待される経済的で施工性に優れる対策工として表面含浸工法の適用事例が増えております。しかし,この工法は,既設部材での効果が不明確である理由から,適用範囲は基本的に新設・打換え部材に限定されているのが現状で,既設コンクリート構造物の延命化の社会ニーズに応えるには既設部材への適用拡大に向けた検討が望まれます。

本論文は,既設部材の劣化(凍害等)を模擬した微細ひび割れを発生させた供試体を用いて,表層に吸水抑制機能を付与するシラン系表面含浸材と,鉄筋表面に化学的な保護被膜を形成する機能を有する含浸性防錆材(アミン)の併用による鉄筋腐食の進行抑制効果について基礎的な評価を行ったものです。実験・調査の結果,室内実験では,塩化物イオンの蓄積量が腐食限界に達していない場合はシランを塗布することで高い腐食抑制効果が得られること,断面補修を行う場合はアミンを鉄筋に直接塗布することで腐食速度の減少効果がより期待されることがわかりました。さらに,稚内開発建設部管内の既設の道路橋のコンクリート主桁で行った試験施工では,塗布後2.5年目までの段階で腐食速度が経年的に減少する結果が得られ,室内実験結果の妥当性を確認しました。

 国土技術研究会運営委員会による審査の結果,研究手法が的確で新規性に富み,既設部材の延命化に関する技術課題の解決に資する研究成果と高く評価され,優秀賞が授与されました。


                 
                     受賞者の方々                優秀賞を受賞した遠藤裕丈研究員