1.河川コンクリート構造物の凍害劣化補修に関する研究
凍害を受けた河川コンクリート構造物は、主に断面補修や表面被覆などにより劣化部の補修を行っています。しかし、樋門等におけるコンクリートの凍
害点検や水際部分等における凍害診断手法等は確立されていません。また、凍害劣化に対する補修範囲や補修材料の適用性・持続性等が不明確です。さらに、高
度経済成長期に多く行われた河川改修に伴い、建設された樋門コンクリート構造物が老朽化してきており、今後、維持・更新費用の増大が懸念されています。
この研究では、樋門の凍害による劣化状態を環境条件や施工方法等とあわせて調査することで、凍害劣化・再劣化原因を検証し、樋門コンクリートの置かれて
いる環境条件や劣化程度等に応じた適切な補修対策方法と凍害劣化・再劣化防止対策を提案することを目的としています。
2.表面被覆工法の塩分環境下の凍害に対する耐久性に関する研究
塩分環境下で凍害を受けるコンクリート構造物は,通常の凍害と比べて耐久性が著しく低下する等の深刻な問題を抱えています。この劣化作用への対策
として,現在,主に塩害対策として開発された種々の表面被覆工法が適用されています。しかし、塩害に加えて凍害が作用する実環境下での耐久性等は十分には
明らかになっていません。
この研究では、表面被覆工法のうち、埋設型枠工法、ウレタン被覆工法およびシート工法について、実構造物の調査や室内実験などによって耐久性、設計、施
工、適用範囲に関する検討を行い、塩分環境下の凍害に対する表面被覆工法の適切な設計施工法を確立することを目的としています。
3.現場塗装時の外部環境と鋼構造物塗装の耐久性の検討
鋼構造物の現場塗装では、塗膜性能が塩分飛来や寒冷などの施工時の外部環境の影響を大きく受けます。このため、塗装時の塩分飛来が塗膜性能に及ぼ
す影響を明らかにするとともに、その影響を排除する手法の確立が望まれています。また、低温時に塗装が可能な寒冷地用塗料に関しては、施工性、耐久性等の
性能を明らかにして、適切な施工方法を確立することで工期の平準化を図るとともに施工を効率化することが望まれています。
この研究では、現場塗装時の外部環境(塩分飛来と寒冷)の影響を把握するとともに、室内促進試験、暴露試験および現場施工試験等により、塩分飛来環境お
よび寒冷地用塗料の施工性、耐久性などの性能評価を行い、外部環境に対応した現場塗装時の留意点等を明らかにすることを目的としています。
4.積雪寒冷環境下に長期暴露されたコンクリートの耐久性評価に関する研究
コンクリート構造物の劣化は、材料の品質に加えて、気象等の外部環境や使用環境により著しく異なります。特に、積雪寒冷環境下では、苛酷な凍害と
塩害との複合作用を受けるため、長期耐久性の向上対策が急務となっています。このため、コンクリートの耐久性を予測評価する技術が必要であり、これらの評
価技術には現場での検証による精度向上が不可欠となります。しかし、その検証には非常に長い期間を要するため、促進試験と比較的短期間の現場試験などで耐
久性を予測しており、長期間に渡る耐久性に関しては、予測評価した耐久性と実環境下における実際の耐久性について十分に検証されていません。
この研究では、積雪寒冷環境下に長期暴露されたコンクリート試験体の物性および耐久性に関するデータを継続的に収集し、実環境下における長期的な耐久性
の検証やその予測評価手法の精度向上を目的としています。
5.疲労と凍害の複合劣化を受けたRC梁の耐荷力評価に関する研究
積雪寒冷地における道路橋のRC桁などは車両による疲労に加え、凍害等による劣化を受け、耐久性などに深刻な影響を受けています。疲労や凍害は長
期にわたり繰り返し作用し、コンクリートの内部ひび割れや鉄筋疲労として蓄積していくため、急激な耐荷力等の低下などが懸念されます。疲労によるひび割れ
は、融雪水等の侵入により、凍害が加速され、凍害による強度低下は疲労損傷を加速させるなど、相互作用による複合劣化は単独劣化に比べ劣化が急速に進行し
ます。しかし、疲労と凍害の複合劣化に伴う道路橋のRC桁などの耐荷力等の変化に関する検討はほとんど無く、現段階では十分に明らかになっていません。
この研究では、凍結融解試験と疲労載荷試験により複合劣化を受けたRC梁の耐荷力等に関する室内実験を行うとともに、非破壊検査手法(超音波など)から
求めた劣化程度に応じた材料物性を用いた有限要素法解析値と実験値を比較・分析することで、疲労と凍害の複合劣化を受けたRC梁の静的耐荷力を評価する技
術を提案することを目的としています。
6.樋門コンクリートの凍害劣化に対する耐久性および維持管理に関する研究
積雪寒冷地の樋門コンクリートは、凍害劣化等による損傷を受ける厳しい環境条件下にあり、凍害劣化状況等を的確に把握する必要があります。特に、
開閉ゲートを支える操作台と門柱は、その形状からコンクリートの凍害劣化による損傷が大きく、劣化の進行によってゲートの開閉等の操作性や安全性が低下す
る恐れがあります。
しかし、凍害劣化がゲート開閉施設等の機能低下に及ぼす影響が明らかとなっておらず、樋門コンクリートの凍害劣化に対する点検方法や評価方法もない状況です。
この研究では、ゲート開閉等の操作性や安全性を確保し、樋門コンクリートの凍害劣化に対する耐久性評価等の診断技術を開発することにより、予防保全型の維持管理を目指すことを目的としています。
7.積雪寒冷地における鉄筋防食材の効果に関する研究
積雪寒冷地の鉄筋コンクリート構造物では、凍結防止剤の影響により、局部的な鉄筋の腐食が多く見られます。これらの腐食は、安全性を低下させ、構
造物の寿命を縮めることから、進行を抑制する対策が求められています。対策として、防錆剤の塗布や塩分吸着剤の混合、小型犠牲陽極の埋設など、様々な工法
が提案・施工されていますが、その評価方法や耐久性・持続性・工法選定など、適用の留意点が明確になっていません。
この研究では、各種鉄筋防食材の要求性能の整理、施工状況や現在の鉄筋腐食状況の調査、室内試験を通じて、各種鉄筋防食材の適切な選定方法、施工管理や維持管理の留意点をとりまとめ、積雪寒冷地のコンクリート構造物の長寿命化に貢献することを目的としています。
8.耐寒剤を活用した冬期施工の効率化に関する研究
コンクリートの強度増進は、養生温度に影響されやすいため、コンクリートの冬期施工の際には、施工空間をシート等で囲った上でヒーターを用いて暖
気します。これに対し、耐寒剤を用いたコンクリートでは、囲いや暖気が不要となり、簡単な養生方法で済むという利点があります。しかしながら、土木分野の
耐寒剤運用マニュアルは20年以上前の研究成果に基づいているため、近年の耐寒剤製品の状況が反映されていません。
この研究では、最新の耐寒剤を用い、適用外となっていた断面厚やセメント種類等について検討し、材料選定・施工法をとりまとめて耐寒剤の利用を促進することで、冬期施工の効率化、コスト縮減、CO2削減を図ることを目的としています。