1.コンクリート構造物の長寿命化に向けた補修対策技術の確立
高度経済成長期に加速的に整備されたコンクリート構造物は更新時期を迎え、今後大幅に増加する高齢化したコンクリート構造物を安心して利用するに
は、適切な補修等によるコンクリートの長寿命化技術が必要不可欠です。補修対策には多くの補修材料や補修工法がありますが、コンクリート構造物の置かれて
いる環境条件や劣化形態は多種多様であり、補修対策技術は未だ十分に確立していません。
この研究では、耐寒材料チームと、つくば中央研究所の基礎材料チームと新材料チームが一体となって、コンクリート構造物の補修対策技術の標準的な考え方
(補修のメカニズム、補修における要求性能、性能評価方法など)を検討し、補修対策技術を体系化することと、主な補修方法である断面修復工法、表面保護工
法、ひび割れ修復工法における補修効果を検証し、施工環境などの状況に応じた適切な補修方法等を明らかにすることで、コンクリート構造物の長寿命化を確立
することを目的としています。
2.凍害・塩害の複合劣化を受けた壁高欄の衝撃耐荷力向上対策に関する研究
積雪寒冷地の壁高欄や地覆は、凍結防止剤や沿岸地域の飛来塩分、融雪水の影響を受けやすく、凍害・塩害による複合劣化が多数生じています。しか
しながら、複合劣化を受けた壁高欄の衝撃耐荷力については明らかにされておらず、補修補強の必要性を判断する手法が確立されていません。
この研究では、凍害・塩害の複合劣化を受けた壁高欄の衝撃載荷実験等による力学性能の検証や壁高欄の劣化状況等の現地調査を行うことで、壁高欄の補修・
補強の必要性を判断する点検・診断技術や劣化程度に応じた適切な補修・補強対策等を提案し、寒冷な自然環境下における壁高欄の機能の適切な維持に貢献する
ことを目的としています。
3.性能規定に対応したコンクリート構造物の施工品質管理・検査に関する研究
現状の施工品質管理や検査は、材料や各施工段階における試験や出来形検査、目視による検査や強度試験等ですが、出来上がりコンクリートそのものの
耐久性等の各種性能を定量的に評価する品質検査技術や判定規準は確立されていません。このため、コンクリート構造物の長寿命化を図るために、受け取り検査
時の各種性能を担保した品質検査技術の確立と、性能規定に対応したコンクリートの施工標準(打設、養生方法等)が求められています。
この研究では、耐寒材料チームとつくば中央研究所の基礎材料チームが一体となって、種々の配合や施工条件を変えた室内促進試験、暴露試験および現場施工
試験等により、性能規定に対応した施工性、施工方法、養生方法等に関する施工管理と竣工時における出来上がりコンクリートの耐久性等の品質を適切に検査で
きる竣工検査技術を提案することを目的としています。
4.凍害の各種劣化形態が複合したコンクリート構造物の性能評価法の開発
寒冷地では、凍害に対するコンクリート構造物の耐久性能を適切に評価する技術が要求されます。現在、耐久性能の照査で行われる凍害劣化の予測は、
単一の凍害形態の進行が前提となっています。しかしながら、現実的には2種類以上の凍害形態(例えば、スケーリングとひび割れ)が同時に進行するケースが
殆どです。このため、コンクリート構造物の長寿命化を図るには、実態に即した2種類以上の凍害形態が同時に進行した際のコンクリート構造物の性能評価法を
開発する必要があります。
この研究では、凍害によるスケーリングとひび割れが複合化して進行する場合、コンクリートの各種品質にどのように影響するか、また、スケーリングとひび
割れが同時に進行しているコンクリートにおける塩化物イオンの浸透性を定量的に評価するなど、スケーリングとひび割れが同時に進行する条件下でのコンク
リートの性能評価法を開発することを目的としています。