研究開発プログラム
『凍害・複合劣化等を受けるインフラの維持管理・更新に関する研究』

プログラム研究個別課題:構造物固有の凍害・複合劣化のメンテナンス技術に関する研究

 本研究課題において,凍害・複合劣化により特徴的な被害が生じているコンクリート構造物の中で,橋梁床版,河川構造物に着目し,劣化特性に応じた点検・診断・評価技術や対策技術の開発を行います.

橋梁床版

 既設RC床版の疲労に加えて凍害等の影響による劣化損傷が顕在化し,さらに,塩害やASR等の単独作用によるものとも異なる形態の劣化損傷(層状ひび割れ)も確認されています.また,走行安全性や第三者被害防止の観点からも適切な対応が求められています.
しかしながら,RC床版と舗装の劣化損傷の関連性が不明であり,劣化特性に応じた補修・補強技術が未だ確立していません.
この研究では,模擬損傷試験体等を用いた床版の劣化損傷の要因,各因子の影響度等の分析や,複合劣化損傷の進展過程,劣化損傷に応じた性能の確認試験,数値解析的等により,劣化損傷特性を踏まえた性能評価手法,対策(補修・補強等)技術の開発を目的としています.

河川構造物

 河川管理施設のコンクリートは,厳しい積雪寒冷環境下で凍害劣化が進行し,また,高度成長期に建設された多くの構造物において流水や河氷等による摩耗劣化も複合的に進行しています.
しかしながら,劣化程度や損傷範囲を判断する診断手法の現場への適用技術が未確立であり,また,劣化実態や補修履歴情報等が整理・分析されておらず,維持補修技術基準が未策定な状況にあります.
この研究では,河川構造物の凍害と摩耗等による劣化に着目し,劣化の点検・診断手法の課題分析と改善策の検討や,既往補修箇所の課題分析,構造改良工法の開発により,凍害との複合劣化に対する的確な点検・診断・補修技術と,現場への適用手法の開発を行うこと目的としています.



プログラム研究個別課題:コンクリートの凍害・複合劣化に共通する耐久性向上技術に関する研究

 現場では,コンクリート構造物が果たすべき役割や環境条件に応じた要求性能を満たす対策の効率的な実施が求められていますが,これまで積雪寒冷地のコンクリートの技術が体系化されていないため,客観的な劣化評価,工法選定が困難な状況にあります.
 本研究課題において,凍害・複合劣化等の効率的な点検・診断・評価,信頼性の高い補修補強,耐久性の高い更新・新設の各技術を確立するとともに,対策の体系化を図り,各種コンクリート構造物に共通する耐久性向上技術を開発します.

補修・更新時期を判定するための劣化予測手法

 効率的な補修・更新のためには,劣化の進行予測が不可欠である中,既往研究の成果である凍害塩害の複合劣化予測式を個別現場に適用するため,環境条件に応じた係数の設定方法が課題となっています.
この研究では,各構造物共通のコンクリート技術として,各複合劣化予測式を開発することを目的としています.

耐寒促進剤の利用による冬期施工の省力化

 冬の渇水期に施工する橋梁・河川構造物工事では,雪寒仮囲いや給熱養生が必要になりますが,耐寒促進剤を用いることで簡易なシート養生による冬期施工が可能であり,施工効率化やコスト縮減を期待できます.
この研究では,既往研究において検討を進めてきた初期凍害の影響把握や高炉セメントの適用性に加え,断面のより薄い部材や体積が小さい場合の適用性の検証を行い,耐寒促進剤のコンクリート構造物の補修への適用時の材料選定・施工法等に関する留意事項を提案することを目的としています.

表面含浸材の冬期施工による高耐久化および省力化

 表面含浸材の塗布により,水や塩分の浸透抑制による高耐久化が期待されますが,冬期施工の場合には,含浸材の塗布ができない,または夏に再度足場等を組んで施工するケースがあり,課題となっています.
この研究では,表面含浸材の冬期の低温環境での施工性・品質(含浸深さ,複合劣化に対する耐久性等)を評価し,留意点を取り纏め,品質確保を考慮した施工法を提案することを目的としています.

凍害・塩害の複合劣化を受ける部材の高耐久設計手法の確立

 凍害・塩害複合劣化への耐凍害性向上のためには,空気量増加,W/C低減,高品質のセメント選定等の多様な選択がありますが,耐凍害性能の確認方法が確立されていないため,現場では各管理者が独自に仕様を設定しなければならない状況にあります.
この研究では,凍害・塩害の耐久性に対する,空気量,気泡分布,セメント配合等の影響や試験方法による違いを把握し,要求性能や合理的な評価指標及び試験法,ならびに標準仕様を提案することを目的としています.



重点研究:コンクリート構造物の劣化部はつり範囲の特定技術に関する研究

 表面から劣化が進む凍害を受けたコンクリート構造物の断面修復においては,劣化部を確実にはつり取らないと再劣化の要因となることが既往の研究からも明らかになっていますが,現在は,コスト面から表面の目視と打音調査により平面的な劣化範囲を特定し,その中の限られた箇所からコアを採取し,超音波伝播速度の計測(透過法)や目視により,劣化深さを特定し,はつり範囲と深さの設計値を決定しています.
 しかしながら,施工時には,多くの場合,設計値通りの範囲と深さをはつり,断面修復しているが,劣化の進行は必ずしも一様ではないため,結果として劣化部を残している部分が存在しています.
この研究では,再劣化の未然防止に向け,劣化範囲・深さを簡易に高精度で推定することによって劣化部分を無駄なく確実にはつり取ることを可能とする,はつり範囲・深さの設計手法を提案することを目的としています.

重点研究:寒冷環境下におけるコンクリートのひび割れ抑制に関する研究

 ひび割れは,凍害,塩害,アルカリシリカ反応等による複合劣化を促進するため,長寿命化のためにはひび割れ抑制対策が有効です.また,配合や使用材料の工夫等によるひび割れ制御(自己治癒性)が注目されており,寒冷地での現場適用性に関する検討が必要となっています.
しかしながら,ひび割れ抑制効果が期待できる収縮低減剤はJIS規格化されておらず,収縮低減効果と耐凍害性への影響は解明されていません.
この研究では,コンクリート構造物のひび割れによる劣化を抑制し,長寿命化を図るため,各種混和材による自己治癒性の評価,収縮低減材料によるひび割れ抑制対策の検証により,寒冷地での収縮ひび割れ制御技術を提案することを目的としています.



基盤研究:非破壊によるシラン系表面含浸材の浸透深さ管理方法の確立

 コンクリート構造物の凍・塩害抑制対策として施工実績が増加しているシラン系表面含浸材は,実施工において部材における含浸深さが直接的に管理されることはほとんどなく,部材における含浸状況や含浸深さを非/微破壊で簡易に把握できる効率的な管理方法が必要とされています.
 この研究では,シラン系表面含浸材が深さ方向のみならず,概ね同心円状に表面水平方向へも含浸する特徴に着目し,実施工においてシラン系表面含浸材の大凡の含浸深さを非破壊で簡易に管理できる技術を提案することを目的としています.

基盤研究:積雪寒冷地における鉄筋防食材の効果に関する研究

 積雪寒冷地の鉄筋コンクリート構造物では,凍結防止剤の影響により,局部的な鉄筋の腐食が多く見られます.これらの腐食は,安全性を低下させ,構 造物の寿命を縮めることから,進行を抑制する対策が求められています.対策として,防錆剤の塗布や塩分吸着剤の混合,小型犠牲陽極の埋設など,様々な工法 が提案・施工されていますが,その評価方法や耐久性・持続性・工法選定など,適用の留意点が明確になっていません.
 この研究では,各種鉄筋防食材の要求性能の整理,施工状況や現在の鉄筋腐食状況の調査,室内試験を通じて,各種鉄筋防食材の適切な選定方法,施工管理や維持管理の留意点をとりまとめ,積雪寒冷地のコンクリート構造物の長寿命化に貢献することを目的としています.

基盤研究:積雪寒冷環境下に長期暴露された建設材料の耐久性評価に関する研究

 耐寒材料チームでは,全国各地の暴露試験場や試験施工箇所において,これまでも永年にわたり,劣化調査を継続しています.また,現地の劣化状況調査結果と,既往の予測式による予測値や室内試験結果とを比較検証することにより,予測精度向上や劣化メカニズムに応じた効果的な対策工の提案が可能になります.
 この研究では,暴露試験体や既設構造物の継続的な調査を通じ,積雪寒冷環境下における建設材料の劣化状況を把握し,予測評価手法および補修方法を検証します.




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