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セメントの成分を改良することでコンクリートの耐久性を向上させる研究
 コンクリート構造物(橋、トンネル、ダムなど)の耐久性を向上させるには、品質の良い材料(水、セメント、砂や砂利などの骨材など)を用いたり、これら材料の混合割合を適切に決めることが重要となります。これらの材料のうち、セメントは、エーライト(C3S)、ビーライト(C2S)、アルミネート相(C3A)、フェライト相(C4AF)と呼ばれる 4 つの鉱物で構成されており、それらの鉱物はそれぞれ違った特性を持っています。そのため、これらの鉱物の割合を変えることにより、色々な特徴を持ったセメントの製造が可能となります。
 
セメントの鉱物組成とその特性
各鉱物の特性
(相対比較)
エーライト
(C3S)
ビーライト
(C2S)
アルミネート相
(C3A)
フェライド相
(C4AF)
強度の発現初期(1日程度)
早期(3〜28日)
長期(28日以降)
水和熱
(セメントが固まる際の熱)
化学抵抗性
 そこで、コンクリートの耐久性を向上させるために、当研究室では、小樽港の 100 年耐久性試験における調査結果などから、長期的な強度発現特性を有し、コンクリートの温度ひび割れの原因となる水和熱が小さく、化学抵抗性も高いビーライト成分の多いセメント(ビーライト系セメント)に着目しました。
 ビーライト系セメントは、従来から用いられていましたが、初期および早期の強度発現が小さい、凍結融解に対する耐久性が低いなどの問題も有していました。そのために、ビーライト系セメントの粒の大きさ(大、中、小)を様々組み合わせて、耐久性の改善のための試験を実施しました。
 
 その結果、ビーライト系セメントの粒度を細かくすることにより、これまで欠点とされていた初期および早期の強度発現や凍結融解に対する抵抗性を改善できることを明らかにしました。
 また、コンクリート中の鉄筋の腐食に大きく影響をおよぼす塩分の侵入に対する抵抗性に対しては、このセメントの一部を高炉スラグ微粉末で置き換えることにより、塩分の浸透速度(塩分拡散係数)を極めて小さくできることを明らかにしました。
 今後さらに、このセメントを実際に使う上での問題点を整理、改善していきます。
   
改良セメントの強度発現特性
 
改良セメントの塩分浸透性
 
 
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