当研究所 耐寒材料チームの遠藤裕丈研究員は、平成23年3月24日付けで、北海道大学大学院工学研究科博士後期課程(社会人3年課程)を修了し、博士(工学)の学位を授与されました.なお、修学期間は2年6ヶ月間と短縮修了しており、これは、長年の研究成果をとりまとめた論文が土木学会論文集(4編)などの権威ある学会誌に掲載されたことや、平成20年度土木学会吉田賞(論文部門)などを受賞したことが評価されたためです.
 学位論文の題目は「凍結融解と塩化物の複合作用によるスケーリングに対する耐久性設計法に関する研究」です.


 寒冷地の沿岸および凍結防止剤散布箇所のコンクリート構造物では、凍結融解と塩化物の複合作用によるスケーリング(表面がうろこ状に剥げ落ちる形態の凍害劣化)が生じやすいことは広く知られておりますが、スケーリングに対する耐久性設計法は確立されていないのが現状です.本論文はこれらの背景に鑑み、スケーリングに対する耐久性設計法の確立を目指して行った種々の室内試験および構造物調査をまとめたものです.得られた主な成果は以下の通りです.

1) 水セメント比と凍結融解サイクルからスケーリングの進行を予測する式を開発した.
2) スケーリングの促進に及ぼす塩化物の影響について実験・解析的な検討を行い、スケーリングの促進機構の定量的説
      明を可能とした.
3) 1)、2)の研究成果の体系化を図り、スケーリングに対する耐久性設計法を確立・提案した.
4) 試験施工・追跡調査を通じて、シラン系表面含浸材を活用したスケーリング進行抑制対策の有効性および活用に際して
      の留意点をとりまとめた.

 これらの研究成果は実務に反映され、社会に広く還元されており、寒冷地のコンクリート構造物の耐久性向上に大きく貢献することが期待されています.

 なお、2011年3月発刊の寒地土木研究所報第133号「凍結融解と塩化物による複合劣化に対するコンクリートの耐久性設計法および表面含浸材を活用した耐久性向上に関する研究」の一部に上記学位論文が掲載されており、下記のアドレスからダウンロードできます.

→     http://thesis.ceri.go.jp/center/doc/geppou/zairyo/00359512101.pdf


 
指導教官の名和豊春教授(左)と遠藤裕丈研究員

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