当研究所
耐寒材料チームの吉田行研究員は、平成21年9月25日付けで、北海道大学大学院工学研究科博士後期課程を修了し、博士(工学)の学位を授与されました.学位論文の題目は「ビーライト系セメントおよび高炉スラグ微粉末を用いたコンクリートの長期耐久性設計」です.
コンクリートは、従来、メンテナンス・フリーな材料として考えられてきましたが、近年では鋼材腐食や収縮ひび割れ等によるコンクリートの剥落事故が生じるなど早期劣化が顕在化しています.このため、コンクリートの長期的な耐久性を向上するための対策が早急に求められています.
本研究では、今後のコンクリートの耐久性向上の方策として、従来からの対策である緻密なセメント硬化体組織を形成させるための低水セメント比でのコンクリートの製造を可能とする材料開発と同時に、環境負荷低減も併せて実現できる材料を見出すことを研究の目的としています.具体的には、製造時の二酸化炭素排出量の低減が可能なビーライト系セメントと製鉄産業の副産物である高炉スラグ微粉末を組合せ、それぞれの長所を生かし、かつ初期強度発現の低減や収縮ひび割れの発生などの欠点を補完することにより更なるコンクリートの高性能化を試みています.また、従来の強度主体の配合設計ではなく、収縮ひび割れ抵抗性、中性化抵抗性、塩分浸透抵抗性および凍結融解抵抗性等の耐久性を重視したコンクリートの配合設計手法についても提案を行っています.これらの成果は、環境負荷を低減しながら、劣化作用の厳しい積雪寒冷地におけるコンクリート構造物の耐久性向上およびライフサイクルコスト縮減に資するものです. |