遠藤裕丈研究員
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コンクリート工学講演会で年次論文奨励賞を受賞


 

耐寒材料チームの遠藤裕丈研究員は,平成2178日(水)〜10日(金)に札幌コンベンションセンター(札幌市白石区)で開催されたコンクリート工学年次大会2009(札幌)「第31コンクリート工学講演会」のセッション「凍害T」で論文発表を行い,年次論文奨励賞を受賞しました.

発表した論文は「スケーリング進行性評価に関する研究」(共著者:田口史雄・名和豊春)です.

積雪寒冷地のコンクリート構造物は冬期間,凍害融解の繰り返しを受ける厳しい環境下に曝されています。特に、凍結融解と塩化物が相乗作用する場合は、コンクリートの表面がうろこ状に剥がれ落ちるスケーリングが促進されます.スケーリングは,かぶりの減少を引き起こすため,鉄筋の露出や腐食速度の増加など,コンクリートの耐久性に及ぼす影響が懸念されます.
しかしながら,限られた財源において,このようなコンクリート構造物の維持管理を行わなければならないことから,劣化予測に基づいたライフサイクルコストの算出や最適な維持管理計画を作成することが求められています.
このようなことから,本研究では,寒冷地で多く見られる凍結融解と塩化物によるスケーリングを取り上げ,これまでに,コンクリート内部と表層の水セメント比,圧縮強度,空気量,気泡間隔係数,地域係数,供用年数の各パラメータに重み係数を乗じ,それらを組み合わせたスケーリング劣化予測モデルを提案しています
(この予測モデルの論文は,平成20年度土木学会賞吉田賞「論文部門」を受賞しています→吉田賞受賞の詳細はこちら

 本論文は、より実用性のある劣化予測モデルとするため,重み係数の大きい水セメント比と供用年数の2つにパラメータを絞った実験および解析を行い,その結果,スケーリングの進行性と水セメント比の関係には一定の規則性があること,また,水セメント比の影響の強さは凍結融解履歴を与えると一定の時間間隔で増幅していくことが明らかになりました.これら2つの特徴を関数化して詳細な解析を行い,水セメント比と凍結融解履歴からスケーリングの進行性を簡易的に評価できるモデルを提案しました.このモデルから計算したスケーリングの程度は,実証実験を行った実構造物のスケーリング程度と概ね一致することが確認されました。
 この研究成果により,スケーリングによるコンクリートの経時的な性能低下曲線を比較的簡易に求めることが可能となり,最適な維持管理計画を策定するためのツールとして有効性が高いと評価されました.
 

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